ニュースレター 2020年 4月
コロナとSARSと東洋医学
巷を騒がしている新型コロナウィルスのお話。
各種報道では毎日のように感染者数や患者さんがお亡くなりなった話が流れてきて不安になることばかり 報道を見ていると思い出すのは2002~2003年に同じく大騒ぎになったSARS(重症急性呼吸器症候群)のこと。
当時、中国の広東省を起源として肺炎の世界的規模の集団感染が発生しました。この時の原因も当時の新型コロナウィルスであったことが判明したわけですが、
(その後、2012年にも中東を中心としたこれまたコロナウィルスによるMARS(中東呼吸器症候群)っていうのもありましたけどね…)
さてこのSARS、WHOの統計によると世界32か国で8,400例以上の患者さんが報告されていますが、
全世界でのSARS死亡率が11%にも上ったのに対し、起源となった中国の広東省では3.8%に止まったというお話をご存じでしょうか?
この裏に東洋医学、とりわけ中医学の権威とされる「老中医」たちの働きがあったと言われています。彼らはSARSに対する中薬処方をいち早く確定し、それにより流行の拡大を食い止めたとされています。
西洋医学が原因の特定まで何もできなかったにもかかわらず、です。
ここに東洋医学と西洋医学の考え方の差があります。少し専門的な話になりますが、出来るだけわかりやすく書いてみますのでお付き合いくださいね
①「病名」と「証(しょう)」、診断の仕方が違う
西洋医学ではさまざまな診断方法を用いて、病気の原因を探し出し、「病名」をつけることで治療方法を決定します。この「病名」って、1度ついてしまうと誤診など余程のことがない限り変わることはありませんよね?
東洋医学は「証」という概念で病気を考えます。
「証」はちょっと説明が難しいですが、「ある一定の症状の集まり」という感じでしょうか。患者さんを「四診(ししん)」と呼ばれる診察方法でみていき、出来るだけたくさんの症状(情報)を集めます。
それをいろいろなカテゴリーに分けていき、どの領域に偏っているかによって「証」を決定します。場合によっては複数の「証」が付く場合もあります。なので、患者さんの症状が変化すれば、「証」もその都度変わる可能性があります。
「証」に対する治療法、すなわち「処方」はあらかじめ決まっているので「証」が変われば、治療法も変わります。
②治療の考え方が違う
東洋医学には「同病異治(どうびょういち)」や「異病同治(いびょうどうち)」という考え方もあります。
例えば一口に「風邪」と言っても熱風邪や悪寒のする風邪、咳が出るタイプや鼻水タイプ、頭痛があったりなかったり…と症状は人によってまちまち。
同じ病であっても、症状が違えば「証」が違うので治療法は変わりますし、逆に違う病であっても、そこに似通った症状や共通の症状が出ていれば、「証」が同じになるので治療法は同じになるんですね。
症状の集まりが「証」を決め、「証」が治療法を決定するんです。だからその時その時の患者さんの状態に応じて「証」が変わる。
同じ病気でも人によって症状は違って当たり前。だから治療法も違って当たり前。東洋医学がオーダーメイド治療だと言われるゆえんはここにあります
西洋医学で「病名」が決定すると治療が画一的に行われるのとは違うのです。
何となく東洋医学が西洋医学に先駆けてSARSを食い止めた理由、お分かりになってきたでしょうか?
東洋医学はSARSの「症状」をみ「証」にあてはめることで治療法が決定できたから原因が特定できるまで治療ができなかった西洋医学より早く対応できたというわけなのですこれはSARSだけではなく、日常の臨床でも同じこと。
西洋医学でいくら検査しても異常が発見されずに診断できなかったものが、東洋医学で治療できるのはこうした診断治療システムがあるからなのです。
(この診断治療システムを「弁証論治(べんしょうろんち)」といいます)ちなみにはりきゅうでもお薬の代わりにツボを配合するだけなので同じ治療システムを使いますよ
さて今回の新型コロナに対してはどうでしょうか?
残念ながらSARSの頃に活躍した「老中医」の先生方は皆さんご高齢だったため、今では多くの高名な先生方が亡くなられてしまいましたしかし中国ではこのSARSをきっかけ東洋医学の見直しがされるようになったのも事実。
これからもこうした新しい感染症が次々に出現してくる時に東洋医学が必要になるはず。
次の世代に彼ら「老中医」が遺したものを引き継いでいってほしいものです。1日も早い「新型コロナ」の収束を願ってやみません。
とりあえず今の私たちに出来ることは
何といってもまずは自分の体調を整えておくことや手洗い・うがい・マスクといった基本的な予防策を講じておくことが大切ですよね
何も新型コロナだけでなく、インフルエンザやノロなど感染症は他にもたくさんあるのですから…
そしてなんといっても自己の免疫力をパワーアップしてウイルスや細菌に打ち勝つ体を作っていくことが肝心です。
免疫力とは、外から侵入した病原体などを監視して撃退する、抵抗力や回復力のことで、体中で働いています。外的な病原体の場合、体にあいている穴から(目、鼻、耳、口など)、気道や食道などを通過して体の中へと入っていきます。
体を病原体から守ってくれる免疫細胞はその各所に存在します。体中でブロック機能が働き(唾液、のどの奥の腺毛、食道の粘膜、胃酸ほか)、守られています
では、そんな“体の力”とも言うべき免疫力を高めるためには、どうすればいいのでしょうか。
体温が上がると、体の機能が活性化され、免疫力も上がります
〈温活〉腹式呼吸&深呼吸で体温を上げる
呼吸すると筋肉が動き、筋肉が動くと体温が上がります。男性は腹式呼吸、女性は胸式呼吸が多いのですが、腹式呼吸は人体で最も大きな筋肉=横隔膜が動くので、高い発熱効果が望めます。
深呼吸は腹式なので女性は1日数回、深呼吸することを心がけましょう
呼吸が浅くなっていると感じたときは、深呼吸しましょう。おへその下を意識しながら大きく息を吸い込んだら数秒止め、しっかりとおなかが膨らんでいるのを感じてからシューッと吐き、3回くり返します
〈巡り改善〉爪もみ ツボ刺激で静脈の流れをよくする
爪のはえぎわの両角には神経線維が密集する「井穴(せいけつ)」というツボがあり、東洋医学ではこのツボが自律神経を調節するポイントと考えられています。爪もみは井穴を刺激する健康法で、ここを刺激すると自律神経に伝わりバランスが整います。それによって免疫力が高まり、血液の流れもよくなります。
1日2~3回を毎日続ければ、血行が良くなり不調改善に効果があるといわれています
〈自律神経改善〉正しく入浴、質のよい睡眠で疲労を回復
体の疲れをとるためには、良質な睡眠をとって自律神経を整えることが不可欠です 睡眠中は免疫細胞の働きが活発になり、免疫力も高まります。人は体温を下げながら入眠するので、布団に入る30分前に体温を上げると質のよい睡眠がとれます。
入浴すると体が温まり、コリが心地よくほぐれてリラックスすることで副交感神経も働きます。湯温が高いと交感神経が働いてしまうので温度は42℃以下に設定を。シャワーだけでは体が温まらないので、湯船につかって体を温める入浴習慣をつけましょう 。
同じ環境にいても、カゼなどの感染症にかかる人とかからない人がいます。この違いは免疫力の違い。これによってさまざまな病気から身を守ることができます 免疫は、ストレスや不規則な生活、生活習慣の乱れなどがあると自律神経のバランスが崩れて低下します。
そのため、健康を維持するためには、日ごろから自律神経のバランスを崩さないようにすることが大切です。
〈中脘穴のツボ押し〉
1 ①へそから指6本分真上の位置を探します
(おへそとみぞおちの真ん中)
2. ②中指と人差し指で痛くない程度に10回ほど押します
免疫力を高めるツボのポイント
息を吐きながら押し、息を吸いながら戻すようにしてください。
この中脘というツボは消化器官全般によく効くツボで知られ、特に胃腸の病を改善し、胃腸の働きを活発にしてくれます。代謝を改善して免疫力UPにも効果があります。
やってみてください ‼
院 長