ニュースレター 2020年 1月
新年あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
東洋医学的冷え対策
東洋医医学的に、冷えは実寒と虚寒に分類されます。実とは引き算が可能な病態、虚とは足し算が必要な病態です。
実寒は主に飲食物の摂り過ぎによる水滞が原因です。体力の低下はありませんので、飲食物の摂取を八分にし間食を控えること、温かいものを摂取すること、適度な運動(ウォーキング等)を、最初は少しから始め、徐々に時間を増やしていくことです。こうすることで水邪が除去できれば、冷えは解消されます。個人の力でも、根気さえあれば解決は可能だと思います。
いっぽう、虚寒は水邪のような何かを除去すればいいという問題ではなく、体力(正気)を増やすということが必要です。引き算ではなく足し算です。会社経営でも、リストラは比較的容易だが、資本を増やすのは難しいですね。収支の明確な経営でもそうなのです。体力は視覚化できません。
体力を増ことは、いわば奇跡的なことで、だから体質は変わりにくいのです。
例えばこういう話があります。北海道の人と沖縄の人で、どちらが寒がりかという実験で、結果は北海道の人の方が寒がりでした。これは寒さに素早く順応するために、寒いと感じるセンサーが鋭くなっているためです。寒さに強い体質的要素とはこの程度のものです。
これとは別の要素があります。よく動く人は薄着です。動くと温かくなるからです。つまり、よく動けるだけの体力を身に着けることが大切で、それが暑さにも寒さにも負けない体なのです。寒さだけに強い体や暑さだけに強い体ではなく、寒さにも暑さにも強い体こそが、「冷え取りについて」皆さんが望まれる体であると思います。かりに冷えが取れたとしても、暑さに弱い体になってしまっては元も子もありません。
動けることが必要だとは言いましたが、単に動けばいいというものではありません。体力もないのに無理に身体を動かすと、やがて動けなくなるような症状、…たとえば痛みとかめまいとかカゼひきなどの体調不良…が起こります。それで結局は動けない、ということになります。動けなくなると冷えも改善しません。ウォーキングは体力をつけるために非常に重要ですが、5分以上やっただけでやりすぎになっている場合はいくらでもあります。分刻みでこれを診断でき、指導できる力のある医者が必要です。僕はこれを脈診で診断しますが、個人の力で体力をつけることが、いかに難しいかということがお分かりになるでしょうか。
動くためには睡眠も大切です。動くことは陽、睡眠をとることは陰です。
陽とは動・実用です。
陰とは静・実体です。
陰が陽を生み、陽が陰を生む。この循環は宇宙の誕生から果てしなく続き、我々もそのスパイラルの一部として生命を営んでいます。陰陽とは、ここでいう体力そのものです。この陰陽を広く大きく強く持っていくことが、虚寒を改善するためには不可欠です。
治療では、その人その人にあったアクションを積み重ねていきます。治療で用いるツボしかり、養生指導しかり、価値観の指導しかり。そうすることで、奇跡は奇跡ではなくなります。
無理に温めることは絶対にしないことです。お風呂に無理に長時間入るなどはもってのほかで、足湯でも無理に辛抱すると陰を消耗します。無理に温めようとすると、体力を消耗してかえって冷えてしまいます。
そもそも食材は感謝して美味しくいただくことが大切で、それにより栄養も身に付き、活力も生まれるのではないかと思います。これは温めるから体に良いとか、これは〇〇の栄養素があるから多めに摂ろうとか、そういう方向に偏り過ぎることがもしあったならば、それは誤った道で良い結果にはなりません。
気持ち良いと感じるならば、半身浴や靴下重ね履きなどは、やってもOKです。ただし、足首を締め付け過ぎないように気を付けましょう。温かいものを飲食することは大切で、これは体温を奪わないという働きがあります。体温が奪われなければ、体力を体温に変換する必要がないので、体力を温存し貯金することができます。ただし、温める働きはありませんので、これのみで冷えを取るのは難しいことです。
もし虚寒で体力の弱りがあり、ご自分で冷えを改善されたいなら、
①ストレスをためない
②飲食は腹八分に
③何事も無理をせず八分で留める
以上を心掛けるのはいかがでしょうか。
①について…毛布・暖房に使う火などは、冷える人にとっては不可欠です。それ以前に我々は衣食住がなければ生きていけないし、土がなければ食材が得られず、水や空気がなければ命はつなげません。ないと困るが普段忘れがちなもの…これらをわれわれは数えきれないほどに与えられています。常に感謝するトレーニングを怠らなければ、結果としてストレスがたまりません。ストレスは体力を非常に消耗する要素です。
②③について…腹八分ということは処世上すべてに当てはまる真理です。食べ過ぎ・無理のし過ぎは体力を消耗します。つい何でもやり過ぎてしまうのは欲があるからです。欲を去るということはなかなか難しいことですね。でも、それがたとえできなくても、そういう価値観を持つことこそが大切なことだと思います。かくいう僕もそれができているなど到底言えず、そうありたいと願うものの一人です。欲を離れた瞬間に気持ちが楽になる…誰もが経験のあることだと思います。これで体力がつく、健康になるということは、それが真理だからです。
これらを踏まえたうえで、もし気が向いたならば、ウォーキングにでも出かけてみたらどうでしょう。無理せず、自然の美しさを実感しながら。いい循環はそんな小(ささ)やかな瞬間から始まるのだと思います。
院長