東洋医学からみる鬱症状の原因 Part2

2020/02/29 ブログ 疾病別ブログ スタッフブログ
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東洋医学からみる鬱症状の原因 Part2

 

焦燥感 火→心臓

肝気鬱結で、肝臓が条達できないと、条達を失った肝臓は、気滞を生みます。気滞が長期化してこじれると、邪熱に変化します。肝臓という働きを邪熱が阻害する状態のことを、肝火と言います。肝火もまた、イライラが特徴です。肝火は容易に心臓に飛び火します。その状態を心火と言います。心臓は家、「こころ」は家主に例えることができます。心臓は「家」なわけですから、心火があるということは、家が火事をおこしたようなもの。家主である神は、家にいることができず、焦燥感が生じます。怒りっぽかったり、暴れたり、眠れなかったりします。

熱を取り去る治療を行います。

証…气郁化火証

ツボ…手の十井穴・督脈上の要穴・肝兪・後渓など。

漢方薬…丹逍遥散など

心火・肝火が長期化し、陰(クールダウンし落ち着かせる体力)を消耗すると、火を消し止める水が無くなったようなものなので、焦燥感その他の症状が慢性化します。

陰を補い、結果的に熱を取り去る治療を行います。

 

証…陰血不足

ツボ…照海・関元・腎兪・心兪・肝兪など

 

 

不安感① 血→心臓

肝臓が条達できない状態の長期化や、度重なる食べ過ぎは、脾臓を弱らせます。脾臓が弱れば、体力のストック機能である「血」が弱ってきます。血は栄養分から作られるからです。

心臓という家にとって、血は大切な柱のようなものです。それが弱くなるのですから、家主である「こころ」は、家で落ち着くことができず、不安感が生じます。この不安感はまさに地獄の苦しみで、何よりもつらいものです。不安があると、安眠もかないません。脾臓の弱りは、症状の慢性化につながります。

脾臓を強くして、血を補う治療を補います。同時に精神を落ち着かせ、無駄な血の消耗を防ぐよう治療します。

 

証…心脾両虚

ツボ…神門・三陰交など。

 

 

不安感② 湿痰→心臓

脾臓が弱ると、栄養分をめぐらせる運化機能が弱くなります。栄養分はよどんで、ネバネバ・ドロドロ・モヤモヤとした湿痰を生みます。これが肝臓の気逆と結びつくと、湿痰は上行し、「こころ」の家である心臓を覆います。「こころ」は湿気に覆われて落ち着きをなくし、不安感を生じます。「こころ」は雲に覆われた太陽のように、本来の輝きを失い、表情も考え方も陰湿になります。また、湿痰がノドに至ると、ノドの閉塞感・詰まった感じを生じます。脾臓の弱りがあるため、症状は慢性化します。

脾臓を強くしながら、湿痰を取り去る治療を行います。

 

梅雨の時期、救急車の出動数が増えるという話を、隊員の方から聞いたことがあります。うつの患者さんが救急車を呼ぶからだそうです。うつの患者さんの多くは脾臓の弱りによる湿痰を持っています。この湿痰が梅雨の湿気に助長されて増加します。また増加した湿痰は脾臓をますます弱らせ、血を生み出す力が低下し、うつ独特の耐えようのない不安感を生じます。深刻なうつは必ず脾臓の弱りと湿痰があります。これを治療で上手にとってやると、その場で気持ちが晴れ晴れしてくる…これは、決して珍しいことではありません。

証…痰気郁

ツボ…脾兪・胃兪・膈兪・内関・公孫・豊隆など

 

体のだるさ

脾臓の弱りが強くなると、活動力の元である「気」が弱ってきます。これから弱くなると体がだるくて動けなくなります。「深い穴に落ち込んだように動けない」状態です。食欲もなくなります。食欲がないので動けず、動かないので食欲が出ない。こういう要素が不安感を余計に増大します。特に、食事がおいしく感じられなくなることは重大なことで、幸福感が得られなくなってしまいます。

少しましになって食欲が出だすと湿痰を生じ、その湿痰がまた脾臓の弱らせる…という悪循環となります。

脾臓を補い、元気を増強させる治療を行います。

 

証…心脾両虚

ツボ…神厥・中脘・下脘・足三里・太白・脾兪など



まとめ
いわゆる不安感には、不安感(クヨクヨ)と焦燥感(イライラ)が混在しています。上に述べた肝火・心火・脾虚・湿痰・胃腸の熱・血虚・陰虚が複雑に絡み合い、独特の心理状態をもたらします。それは経験した人でないと分かりづらい苦しさ。でも、一つ一つの原因を噛分け、それをキチッと片づけていけば、必ず心に光が差し込むはずです。